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書評

【書評】「不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」

更新日:

猪俣 淳 著

不動産投資家の皆様にオススメしたい、論理的に思考するための一冊

著者紹介

著者:猪俣 淳 氏

不動産投資コンサルティング会社 株式会社アセットビルド 代表取締役

著書『アパート大家さんになった12人のフツーの人々』・『不動産投資にまつわる100の話』・『不動産投資の正体』・『「こういう話が聞きたかった!」という家を建てる人の参考書』等

大学卒業後、個人の住宅購入やマイホーム建築の仕事を十数年経験。自身でも不動産投資を実践。26種の不動産投資関係資格を保有。特に米国認定不動産経営管理士、米国認定不動産投資顧問の資格がとても役に立っているそうです。
以前猪俣氏のセミナーに参加した経験がありますが、内容が非常に論理的で、とても勉強になりました。

本目次(大項目)

序章 不動産投資を取り巻く社会情勢
 第1節 不動産投資手法の分類
 第2節 投資環境としての社会情勢

第1章 自分でやってみた5つの投資事例
 第1節 私自身のポートフォリオと出口戦略
 第2節 「お助け物件」とポートフォリオ効果

第2章 出口戦略・組合せ戦略実践マニュアル
 第1節 方向性を決める
 第2節 「不動産投資のメリット・デメリット」
 第3節 投資分析マニュアル
 第4節 投資分析の応用

※書評・まとめ記事では基本的に具体的な内容よりは、抽象的な内容になります。この本は特に具体的な部分はかなり細かいので、実物でご確認ください。

導入

猪俣氏の投資手法は


1 長期保有する「コア物件」

2 築浅でCF重視の「インカムゲイン重視」の物件


3 「キャピタルゲイン重視」の物件



を適宜組み合わせながらポートフォリオを作っていく手法です。

バランスが良く、ポートフォリオという概念を持ちながら運営している投資家は
多くないと思いますので、この考え方も参考になります。

禅語の「把放自在(はほうじざい)」…「握るも話すも自由自在。じゆうな捉われのない心の状態」 

という言葉で用いて、「『物件』や『地域』や『手法』や『成功体験』に、知らず知らずのうちに捉われてしまうのが人間の常ですが、いったん一歩引いたところから、フラットな目で見てみるということはとても重要です。」と説きます。

私もそう思います。

自分は色々なことを知っているし、やっていると慢心して、心が心に縛られてしまうことがあるのではないでしょうか。

猪俣氏はこの「フラットな目で見てみる」ための手段として、数字を用いた分析手法を用いています。

序章-第1節「 不動産投資手法の分類 」

1 高利回り物件の取得で、キャッシュフローを得る手法

2 フルローンを受けやすい物件の取得でレバレッジを大きく効かせ、キャッシュフローを得る方法


についてそれぞれ例を挙げ、リスクとリターンについて考察します。

どちらが良いということではなく、どちらでも目的を達成することは可能ですが、不動産投資はスタート時点や数年運用した段階では「成功したかどうかの判断がきわめて難しい」としています。

投資全体が「自分の意向や希望に沿ったものなのかということを理解したうえで、皆さんそれぞれのリスク志向・投資志向に基づいて判断すべきだということを知っていただきたい」と締めくくっています。

この考え方のバランスというか、フラットで客観的な見方は大切だと思います。

序章- 第2節 「投資環境としての社会情勢 」

この節では、社会情勢の変化や金融市場等の変化と不動産の関係性や、周期的な変化について解説しています。

この記事を書いている時点では、コロナショック真っ最中の社会情勢で、不動産価格も当然下がっていくものと考えられます。

個人的には、不動産投資ブームの中で収益不動産需要が高まり、情報の格差も無くなってきている状況で、どのような変化が起こるのかを考えると、以前のサブプライムローン問題の下落時のような状況とは異なる形の変化になってくるのではないかと考えています。

いずれにしても不動産は時代とともに、周期的な変化をしています。その大きな流れを把握するというマクロ的な解説がされている節となっています。

第1章「自分でやってみた5つの投資事例 」(第1・2節)

この章では、猪俣氏が所有してる(していた)6棟5物件についての、購入・運営・売却までのレポートが詳細に記されています。

他の本(他の投資家)とは異なる点は、非常に論理的な考察がされていて、様々な選択肢を数字を用いて論理的に考えることで、最適な選択肢を選ぶということが徹底されている点です。

特に、多くの本で「税金」についての考察が欠けていますが、猪俣氏の分析では当然「税金」も考慮した分析となっています。

第2節冒頭では、繰り上げ返済についても一つの投資として取り上げています。

「K%(ローンコンスタント)」というという考え方を用いますが、この繰り上げ返済によるキャッシュフローの改善についても、他ではほとんど取り上げられていません。

私もこのK%により繰り上げ返済について、積極的に実施しました。

手持ち現金がある場合に、新たな投資に使うのか、もしくは繰り上げ返済に充てるのか、という選択肢を持っておくと良いと思います。

その際の指標となるのが「K%」です。

この章を通じて5物件を取得した経緯や運営の仕方、出口戦略の分析方法についてかなり詳細な分析がされているので、自分の物件当てはめて分析したり、今後購入する際の良い先行例となると思います。

第2章- 第1節  出口戦略・組合せ戦略実践マニュアル 「 方向性を決める 」

この章では、前章の例について各種分析の計算方法と考え方についてマニュアル的な位置づけとしています。(前章でもかなり詳細に分析していたと思うのだが・・・)

まず第1節は「方向性を決める」


第一ステップとして「何のためにするのか」をはっきりさせておかないと、思わぬ方向に向かってしまったり、遠回りをする結果となることが少なからずあると言っています。

不動産投資をはじめると、次々に物件を買いたくなり、規模が膨らんでいきます。

ただ、不動産賃貸業は様々な分野の知識が必要であり、様々な人とのやり取りも必要であり、規模拡大に比例して様々な雑務や労力や財務的な調整が必要です。

時間は限られており、体も一つしかありません。

目を向けられる物件も限られてきます。

物件の拡大によって気も大きくなりますが、反対に失ったり、バランスが取れなくなることもありますので、目的に沿った投資活動が必要だと私も思います。


猪俣氏は、

1 投資する資本

2 目標キャッシュフロー額

3 それは何年後に実現したいか


をベースに考えることを勧めています。

ただ、この章からかなり数字が多く出てくるので、理解しながら読むには相当な時間が必要になりそうです。

この節の最後では、お金は「手段」であるが、お金が「目的」になってしまっている方が多いので、「生き方」について自分自身に問いかけて、それに必要な予算組みを立ててみることを勧めています。

その通りだと思います。

第2節は「不動産投資のメリット・デメリット」



ここではデメリットの部分について取り上げます。


不動産投資のデメリット

1 流動性が低い

2 金利上昇、滞納、空室、賃料低下、財務、災害、事件・事故など不動産投資特有のリスク

3 短期の売買を繰り返すには費用コストが高い

4 値下がりして売却をする場合、売値が残債を下回る場合がある

5 細かい分割がしにくい


これらのデメリットについてリスクを取りながら、長期で頑張っていくのが不動
産投資ですね。



第3節は「投資分析マニュアル」


この節は具体的に計算をしていく内容になるので割愛しておきます。

しかしこの章がこの本のメインコンテンツであり、一番難解な部分であり、一番重要な内容であると思います。

この節の内容をいかに自分の頭に入れていくことができるか。

それによって不動産を見定める力が変わってくると思います。

実際に手を動かして読み進める必要がありますので、

ただ目で追っているだけでは理解できないと思います。

第4節は「投資分析の応用」


この節では、様々な物件の長所と短所を理解して、
所有物件のポートフォリオを効果的に組み立てることを目指しています。

築古・新築、木造・RCなど、相互補完的に組み合わせることで、
安定したポートフォリオを組むことができます。

このポートフォリオという視点も、他の本にはなかなかない視点です。

このポートフォリオ戦略と出口戦略によって、
自分が設定したゴールに向かっていくわけですね。

この節の最後では、
物件を検討するときの分析の仕方(買うかどうかの検討方法)を、
順を追って解説しています。

妥当な購入価格の算出のしかたとして下記が挙げられています。


1 賃料の妥当性を調べる

2 空室率と運営費率でNOIを計算

3 キャップレートで市場価値を計算

4 DCR・CCRから投資価値を計算

5 改修費のコストを見積もり

6 価格と自分の条件の調整

7 DCFによる判断・出口での損益の反映


難しそうな単語が出てきますが、
だいたい下記のような感じです。


NOI=営業純利益

DCR=負債支払安全率(NOI÷年間返済額)

CCR=自己資金配当率(自己資本の回収率)

DCF=キャッシュフローの割引現在価値
   (変動する収入や経費を予測して算出した現在の理論価格)


という感じで、ちょっと難しくハードルが高い感じがしますが、

通常何となく、もっと簡易的な方法や間隔で評価することが多いですが、

これらの方法によって物件を評価していくことで、

客観的かつ論理的な不動産投資を行うことができそうです。

(私もまだDCF法を使って理論価格を算出するところまではできていません・・・)

まとめに代えて

この書評のまとめに代えてとして、
第2章の「最後に」から引用させていただきたいと思います。

不動産投資はマネーゲームではありません。

どれだけ大きな融資を引けたか、どれだけたくさんの物件を手に入れられたかを競っても、あるいは家賃収入の多さは資産の大きさを自慢し合っても意味のないことだと思います。

それよりも、自分自身が持っている仕事とは別にひとつの事業を行うことで自分の人生を経済的に安定させ、さらにそれを通して社会に貢献して、その結果消費者から支持を得ていくことが成功に直結するという部分に価値や魅力があると思っています。

(中略)

自分はどこへ行こうとしているのか、何のためにしているのかということを時々思い出しながら頑張ってください。


あなたの同志より

おわりに

書評の記事では、基本的に本内容の全てはご紹介していません。

紹介していない部分の方が多く、ここで紹介している内容には、私の個人的なバイアスがかかっております。

しかし、その一部でも心に響く内容があったのではないかと思います。

どういった形でも良いので、気になった方は是非ご一読ください。

おすすめ度  ★ ★ ★ ★ ★

とても1回では読み込めません。全投資家必読の一冊です。

猪俣 淳 著

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