以下、「本書」という。
お金の増やし方や貯め方については数多くの本が出版されていますが、
この本はお金の「使い方」の本です。
2016年10月初版です。
著者は31歳で会社を売却し、3億円ものお金を使ったそうです。
お金との向き合い方、生きたお金の使い方について書かれている点で、
他の本とは一線を画している面白い本なのでご紹介します。
「お金をどこにつかっているのか?」という側面だけでも、その人が置かれている状況はだいたいわかるものです。自らを客観視し、その軌道を修正できる能力は、男女問わず必要なことです。
はじめに(p7)より
お金を通して自らを客観視するというのは面白い考え方だと思います。
著者紹介
著者 : 鬼頭 宏昌 氏
1974年生まれ。父親から会社を引き継ぎ、6年で20店舗、年商20億円の外食チェーンに成長させ、32歳の時に売却。(31歳の時か32歳の時かは不明)
その後様々なビジネスを展開中。
31歳の時に有名な個人投資家である竹田和平氏から生き方やメンタル面での学びを深め、本書にもたびたび竹田和平氏の話が登場する。
目次
第一章 なぜ「稼ぐ」より「つかう」方が大事なのか
第二章 お金には「原理原則」がある
第三章 積極的に借金せよ
第四章 お金は人が運んでくる
第五章 運は日々の積み重ねでよくなる
第六章 資産家の素顔―なににお金をつかっているのか
第七章 起業こそ最強の蓄財術
第一章 なぜ「稼ぐ」より「つかう」方が大事なのか
著者は居酒屋チェーンの事業を売却し、30代の10年間で3億使った経験から、期せずして得るもの、わかったことがあったといいます。
それが本書のテーマです。
まず、事業で売却した資金を「株」に投じました。
案の定5000万円を投じて半分くらい損をしたそうです。
しかしその後「金」を2000万円分買って、現在も持ち続け、
ある程度株の損を回収できそうな状況とのこと。
その後、知人所有の400坪の豪邸に住まないかと打診があり、
本来家賃50万円のところを20万円で住みますが、
しかし光熱費が10万円かかることに。(笑)
買ってもいいかなぁと思っていたところ、不動産業をしている知人からこう言われたそうです。
「鬼頭君、そんなところを買っても売るときに困るよ」
不動産を買うなら、売るときに買い手がすぐにつくものを買うように勧められたそうです。
確かに400坪の豪邸を買おうと思う人はかなり限られています。
私も自宅を買うときには、便利な立地で大きすぎない家を選択しました。
今では買った値段よりも高くなり、かつ残債が減っていますので、
売るときに価値が下がらないか、高く売れる不動産で、すぐに買い手が付きそうな物件を買うというのは鉄則ですね。
価値が下がらないものを意識的に買っていくことが重要なのです。
P35
これこそが、普通の人が資産をつくるための最大のポイントだといえるでしょう。
(中略)
特に家やクルマなど、金額の大きいものにお金をつかう際は、リセール(売却)を常に意識することが大切になってきます。
どういったものが価値が下がらないのか、それはなかなか簡単にはわからないものなので、
高額のものを買う場合には、それなりのリサーチをして、知識をつけ、将来価格についてある程度予測したうえで買うことが重要です。
第二章 お金には「原理原則」がある
お金の感覚的な価値は、年を取るほどに下がっていきます。
子どもの時に1万円もらうのと、大人になってから1万円もらうのとでは、
お金に対する価値はかなり違います。
20代、30代のお金が必要な時にはお金がなく、
50代、60代のお金があまり必要ない時になって、お金を持つことになる。
お金の価値が高い時にお金を使わず貯金して、
お金の価値が低い時のためにお金を残そうとするわけですね。
それってお金を上手に使えていないかもしれませんね。
若い時にお金を上手に使っておきたいものです。
「お金は先に出さないと入ってこない」という考え方があります。
p48
コップのジュースを飲み干せば、次のジュースが注がれるといった感じです。
これが本当にその通りであれば、こっちの方が人生は圧倒的に楽しいはずです。
資産になるものには絶対条件がある
- 買った値段より高く売れたら、優良資産
- 買った値段と同じ値段で売れたら、安定資産
- 買った値段より安くしか売れなかったら、目減り資産
次に、私が日常的に心に残っていて、常に意識している原理原則をご紹介します。
同じお金を出すのならより価値や満足度が高いものにお金を出す
価値が下がりにくいもの、価値が一緒ならより安いものにお金を出す
価値を判断するためには、知識や経験が必要です。
それがない状態で高額な取引を行えば、一か八かの賭けをしているようなものです。
それにしても上記の原理原則はとても価値のある格言だと思います。
さらに心に響く言葉があるので引用したいと思います。
自分がいいなと思ったものにお金をつかう、旦那になったつもりで応援する。投資というと金銭的なリターンばかり追い求めがちだけど、リターンばかりを追い求めるだけだと人生がつまらなくなります。
p60
何のためにお金を使うのか、それってやっぱり「人生を幸せに生きるため」でしょう。
さらにこう続きます。
ただお金を貯めること、稼ぐことばかりを追い求めていると、逆説的ですが、お金は思うように入ってこないものだからです。
p64
お金を追い求めすぎると、良い循環が生まれないようですね。
第三章 積極的に借金せよ
借金を上手に味方につけることこそが、資産をつくっていく際の最大のポイントになるのです。
p78、79
(中略)
価値が下がらないのであれば、借金してでも買った方が得なんです。
(中略)
普通の人が資産をつくろうとしたら、身の丈にあったものだけにお金をつかっていてはいけないのです。
そうしたお金のつかい方ばかりしていると、いつまでたっても価値の低いものしか買えないので、資産は目減りする一方です。
これは『金持ち父さん貧乏父さん』の理論ですね。
良い借金と悪い借金、資産と負債を区別して、
「借金して資産を買う」
ということから、続いて、
「借金して時間を買う」
というところまで論が進みます。
品質の高い仕事道具があったとして、
毎月数万円ずつ貯金をして、数年後に買うとします。
その間の仕事は品質の低い道具で行うことになり、
成果物の品質や作業効率も低くなります。
それよりも、借金をして品質の高い仕事道具を先に買って、
貯金と同じ額だけ返済するのでも負担はほぼ同じです。
借金によって数年間の仕事道具の効果を先取りできるわけです。
なお、本書ではドラムセットが例になっています。
「借金をして時間を買う」という考えも大切な視点だと思います。
第四章 お金は人が運んでくる
お金は人が運んでくるとよくいわれます。
P93
お金が介在するものに仕事がありますが、仕事は人とのかかわりの中でしか成立しません。人からもたらされてた情報や人が仕事やお金につながっていく、これは否定のしようがないでしょう。
(中略)
相手にとってプラスの情報や言葉を発していれば、自然と人が集まってきてコミュニティができていく。
私がこうしてブログを書いているのも、
読んでいただいている方にプラスの情報を発信するためです。
この作業によって実は自分の方が頭の整理ができ、
時間を有意義に使っていくことができていると思います。
また、前ブログでは本当にたくさんの方に読んでいただき、
不動産のコミュニティを作ることができました。
また改めて色々な人とコミュニケーションをとっていければと考えています。
筆者は竹田和平さんの本を読んで、「この人は、オレの師匠だ!」と直感で思ったそうです。
そしてすぐに手紙を書き、その翌日に和平さんから「昼飯でも食おうよ」と電話があったそうです。
初めて会った人にできることって、せいぜい相手の話をよく聞いて、笑うことくらいです。だけど、そんなシンプルなことこそが、相手に「コイツいいな!」って思わせる唯一にして最大の武器あったりするようです。
p102
と言っています。
相手に対して今自分ができることを精一杯提供していく姿勢が大切なのかもしれませんね。
ただ単に人の役に立ちたい、感謝の気持ちを伝えたいということを、見返りを求めずにやっていくことがかえって自分にとってプラスになるような気がするんです。
p111
第五章 運は日々の積み重ねでよくなる
どうすれば人に好かれるか、前章でお話しした「かわいげのある人」になることのほかに、もう一つ大事な要素が、「素直になれる」かどうかです。つまり、人の話を素直に聞いたり、自分の気持ちを素直に伝えたりできることをいいます。
p118
「ほんこれ」っていう感じですね。
この「素直さ」こそが一番の好かれ要素で、かつ著しく成長するための一番の要素であると思います。
だからこそ、この「素直さ」はなかなか持てるものではありません。
「素直な性格の人」は意識せずに「素直さ」を持っているわけですが、
そうではない人でも意識的に「素直さ」を持つことができると思います。
特に教えてくれる人に対しては、「最大限の素直さ」を持って接することが大切だと思います。
第六章 資産家の素顔―なににお金をつかっているのか
(お金持ちは)自分がワクワクすることに対してはいくらでもお金を使う一方、自分が興味のないことには1円たりとも使わないというのが真意ではないでしょうか。
p144
お金持ちはケチと言われることもありますが、
全てにお金をケチっている人がお金持ちになれるわけがありません。
「ここがお金の使い時」という時には惜しみなくお金を使うはずです。
一方で無駄な(無駄だと思う)お金にはお金を使わないようにしているのでしょう。
第七章 起業こそ最強の蓄財術
この章はビジネスで成功している著者だから書ける内容が多いので、
是非読んでもらいたいです。
(うちの会社は)誰がやっても儲けが出る仕組みになっている。事業がうまくいっているときは収入が得られるし、最後に売却という手段もある。
p177
収益不動産はこの仕組みになっていますね。
オーナーチェンジで買うだけで、買った日から家賃収入が入ってきて、
売買市場もオープンで、ある程度の流動性があります。
どのビジネスも、「仕組みづくり」は非常に大事で、
(トップを含め)誰かが欠けたり、交代しても継続できる体制を整えられれば、
事業自体の価値は高まりますし、組織はより強固になります。
事業の売却価値を考えて経営している点は素晴らしいですね。
不動産も、常に売却価値を想定しておくことが大切です。
成功している人は例外なく、とにかく仕事が好き、ビジネスが好きという人ばかりです。(中略)休日も働いていることが多いのですが、ワーカホリックというほど働いている意識はありません。それは、僕にとって仕事は遊びみたいな感覚だからでしょうか。
p178
結局好きなことをしていると時間を忘れてしまいますが、
仕事が好きであれば仕事をしているという感覚すらないかもしれません。
他人から見て努力しているように見えても、
本人はただ好きでやっているだけで、努力しているという感覚は無いものです。
広島カープの鈴木誠也選手は、近年急成長している日本代表の4番と言える選手ですが、
彼はかなりの野球好きで、
いつも野球の動画を見て、バットを抱いて寝たり、
誰よりも先に球場に入り、誰よりも遅くまで練習しているそうです。
野球選手たちは苦しみ・耐えながら練習していると思いますが、
鈴木誠也選手の場合、「好きでやっている」という感覚なのかもしれませんね。
彼の野球好きは有名です。
多くの不動産投資家も不動産が好きだと思います。
だから努力しているという感覚は無くても、
傍から見たらいつも不動産のことを考えて、努力しているように見えているかもしれませんね。
おわりに
書評の記事では、基本的に本内容の全てはご紹介していません。
紹介していない部分の方が多く、ここで紹介している内容には、私の個人的なバイアスがかかっております。
しかし、その一部でも心に響く内容があったのではないかと思います。
どういった形でも良いので、気になった方は是非ご一読ください。
おすすめ度
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お金の使い方についての「原理原則」は、全ての人に知ってもらいたい価値の高い内容です。