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法律・税金

原状回復ガイドラインを再確認

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4月20日のペンタさんの記事で、

原状回復ガイドラインについての内容について十分に認識できていなかったことがあったので、

改めて情報共有させていただくとともに、私自身で再度原状回復ガイドラインについて確認を行いました。

今年度から原状回復ガイドラインが民法に明文化されておりますが、

運用の仕方としては従来(旧年度)と同じやり方のところが多いと思います。

新年度の契約書が手元にありませんので、新旧契約書を並べて比較していませんが、

ペンタさんの情報と合わせて、個人的に認識を更新した内容について書いていこうと思います。

クロスやクッションフロア等の減価償却と借主負担について

耐用年数経過後については借主に負担請求できないと思っていました

原状回復ガイドラインによると、クロスやクッションフロアその他設備について、

減価償却による減価をし、耐用年数経過後には残存価値1円となるため、

借主の故意過失による損耗等があっても請求できないものと考えておりました。

多くの管理会社担当者も同じような認識で退去精算を行っていました。

しかし、ペンタさんの記事によりますと、

故意過失による原状回復に必要な費用のうち、材料にかかる部分と人件費(工賃)にかかる部分を分け、



材料費にかかる部分は減価償却による残存価値が借主負担、

人件費にかかる部分は全て借主負担となる旨、




国交省に確認済みとのことです。

なぜ認識と違っていたのか

それではなぜ私がこの人件費にかかる部分の借主負担について認識できていなかったかというと、

それら人件費にかかる費用の記述が判例や標準契約書に登場しないからです。(もし出てきていたら教えてください)

しかし原状回復ガイドラインにこっそりと例として1回出てきているのが、

次の記述。(恐らく97%の人はスルーしていると思いますが・・・)


経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった 場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがあるものである。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン 」p12

ただし、ここの記述だけでは不十分です。弱いです。


裁判所の判例でも材料費と人件費を分けて考える記述をみたことがありません。

ということは、ですよ、

恐らく人件費にかかる判例とか、ガイドライン・標準契約書上に「人件費」にかかる明確な記述が出てこない限りは、

今現在の退去精算の現場では「まだ」使いにくいわけです。

ではどうするかという話になりますが。

明文化するしかない

基本的に、借主の故意過失で損耗した部分について、借主が原因で原状回復工事の必要が発生するわけですから、

その部分について借主が負担するのは当然です。

ただ、新品に交換するのに、「古いものと新しいものの差の部分は負担しなくてもいいよ」という話ですから、

その「差」の部分以外は全額負担してもらうのが普通の考え方だと思います。

そしてその「差」の部分以外には人件費が含まれているわけですね。

図にするとこのような感じだと思います。(新品の方は材料費-1円になるか)

この考え方自体は原状回復ガイドラインに沿ったものだと思いますが、

借主もこのような認識を持って契約しているかと考えると、

恐らく認識していないでしょう。(私も認識していませんでしたしね!)

ただ、考え方としては真っ当な考え方ですので、

これを現場で反映させて(使って)いくためには、

契約書で明文化していくしかないと考えます。(結論)

特約条項に明記

特約条項については、標準契約書第19条に設定されています。

原状回復ガイドラインには、特約を設定する要件についてこのように記載されています。

1  特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

2 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて 認識していること

3 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

1 について条件を満たすためには、クロスやCFの単価について、材料費と人件費の内訳を記載する必要があります。(例えば下記のような)

このような単価表への記載に加え、特約条項として、

「借主の故意過失による原状回復費用の負担については、当該箇所の工事にかかる材料費は入居年数による負担割合分の負担額とし、人件費については入居年数にかかわらず一定の負担額とする。なお、材料費と人件費の按分については別表第5‐1‐3「原状回復工事施工目安単価」のとおりとする。」

といった表現が良いのかわかりませんが、

このような記述を特約に記載しておけば、人件費については負担を請求しやすくなるのではないかと思われます。

契約時に「原状回復ガイドラインにこんな感じのことが書いてあるんですよ」と口頭でつけ加えておくと、理解が得られやすそうです。

2 については、通常の原状回復義務を超えるものではないと考えられますので当てはまりません。

3 については、特約条項への押印に加え、別紙覚書のような形で明文化し、契約時に認識していたことを忘れても思い出すことができる形で契約すると効果的です。

とはいえ意外にトラブルは少ない

個人的に原状回復で一番困るのは、たばこによる室内全ての壁・天井・建具への汚損です。

今年度改定の標準契約書では次のような記述が追加されました。

喫煙等により当該居室全体においてクロス等が ヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる

賃貸住宅標準契約書(改訂版)

喫煙が無ければ壁床等の貼り替えの必要が発生しなかったわけですから、

こちらについては、一部の管理会社では、さらに特約条項にて室内での喫煙を禁止し、

喫煙した場合には材料費も含めた貼り替え費用全額を負担するように記載して契約しています。

とはいえ、

他の多くの事例では、貸主側でも借主側でも、ある程度の負担は理解の上、

トラブルなく精算できています。

借主さんが本当に通常通り使っていただけていれば、

貸主としてもお礼の気持ちも含めて、少々のことであれば貸主が負担して原状回復工事を行っています。(皆さんもきっとそうでしょう)

しかし一部のトラブルのために、ガチガチに固めた契約書と理論武装が必要なのです。

頑張って知識を更新していきましょう。






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