
今年度の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の改正により、
・住宅用の10kw未満の設備については買取単価21円
・産業用低圧50kw未満の設備については買取単価13円
となりました。(この情報は3月23日のものです)
詳細はこちら「FIT制度における2020年度の買取価格・賦課金単価等を決定しました」をご参照ください。
また、産業用低圧設備については、自家消費型の余剰売電のみとなりました。
売電価格についても、余剰売電のみという条件に付いても、
事実上太陽光発電ブームの終焉を意味するもので、感慨深いものがあります。
もはや事業性がない
土地がタダで手に入れば、まだ10%以上で計画することもできるかもしれませんが、
基本的に10%程度の利回りというのは、融資を利用した場合にCfがほとんどでない水準です。
現在土地付きで出ている物件を見ても、10~12%程度が多いようですが、
初期投資額の総額、維持管理コスト、税額を当てはめてシミュレーションしてみると、
何のためにやっているかよくわからなくなってくるはずです。
現金で買うにしても、余程資金に余裕がない場合、
回収するのに10年以上かかるわけですから、
事業性としては低いです。
そしてさらに、新たなリスクとなる制度変更が現在検討されていますので、
お金が余っている人や、超長期的な視点で考えている人以外はやめておいた方が良いかもしれません。
2023年から発電側基本料金の負担増
「発電側基本料金」とは、送配電設備の費用負担を発電事業者にも求める制度で、2023年度の導入に向け、詳細設計が進められている。送配電設備の費用は、これまで電気を使用する需要家側が託送料金として負担していた。しかし、将来の省エネ等による需要の減少などにより、需要家側に負担が集中することから、これを案分するという考え方に基づき、導入が検討されている。需要家側と発電者側の負担する割合は、9:1だ。
ソーラージャーナル「「発電側基本料金」、FIT買取中でも価格上乗せ 小売との相対で調整」https://solarjournal.jp/sj-market/33304/
「発電側基本料金」の水準は、発電容量に応じ、全国平均150円/kWとされている。
送配電設備(電柱や電線、変電所等の維持管理コスト)を発電事業者にも負担させるという制度が2023年度に向け検討が進められています。
月額150円/kwとのことなので、50kw低圧設備ですと月額7500円くらいの負担額がベースに議論されているようです。
事実上の「買取単価の減額」ということになりますので、
事業者は反発していますが、この基本料金の負担については、
ほぼ確実になりつつあります。
今後、この単価や軽減措置等についての議論が進んでいくものと思います。
設備撤去費用の強制積立
FIT期間終了後に設備を撤去するために、積み立てをしなさいという制度です。
上場企業等以外のほとんどが、「外部積み立て」となり、
外部の指定機関に強制的に積み立てすることが義務付けされます。
これは2022年までに制度化される見込みです。
なぜ廃棄(撤去)が必要かというと、
FIT価格終了後に売電事業から撤退する事業者が出たときに、
廃棄されずに放置されると環境汚染のリスクがあるためです。
廃棄する時にこの積立金が使えるそうですが、
廃棄しようとする人は下ろして使うでしょうけど、
廃棄しようとしない人は下ろさずに放置するかもしれません。
太陽光発電設備を乱立させすぎたので、この関連のリスクは相当程度に高いものと思われます。
ちなみに太陽光パネル等は、分解してリサイクルする工場がいくつかありますので、
廃棄する時にはそのまま埋め立て工場で埋め立てるわけではありません。
架台もリサイクルできる金属ですので、
「きちんとした業者に依頼すれば」設備のリサイクル率は高そうです。
廃棄業者についても指定業者の検討が必要でしょう。
FIT終了後の太陽光発電設備はどうなるのか
このような廃棄費用の強制積み立ての議論を見ていると、
FIT終了後には、既存の太陽光発電設備が続々と撤去され、
元の荒れ地に戻るような印象を受けます。
果たしてどうなるのでしょうか。
以下、私の考えです。

上記図は『固定価格買取制度ガイドブック2020』から引用したものですが、
経産省としては、再生可能エネルギーの比率を
2018年の約16.9%から
2030年22~24%に引き上げようとしています。
この割合を実現しようとした場合に、
既存の太陽光発電は継続して利用していかないと難しいと思います。
しかし、
太陽光発電を電源にすることには、ものすごく大きなデメリットがあるのです。
それは
発電が不安定なことです。
当たり前ですが、晴れの日しか発電せず、曇りでもほとんど発電しません。
夜や雨ではもちろん発電しません。
電力需要は太陽光発電が稼働していない雨の日や夜にもありますので、
晴れの日しか電気が作れない太陽光発電は当てになりません。
しかし、将来的にこのデメリットのカバーすることが期待できます。
蓄電池の普及によるコスト減と性能増
FIT導入時や今でも蓄電池は存在し、
住宅等では導入されていますが、
産業用太陽光の運用に組み込めるほどの性能やコストを実現できる蓄電池はあまりなさそうです。
特にコスト面が大きな課題になります。
私がFITに対しての決定権がある立場であれば、
FIT終了後に事業撤退しない事業者に対しては、
積立金で蓄電池を購入できるようにし、蓄電池の設置を条件に新FITに移行させます。
そしてその分の価格を上乗せしたプレミアム売電単価を設定します。(多少ですけど)
なお、仮に新FITができなかったとしても(たぶんできませんけどね)、
買取価格は低くなりますが、低くても買取してもらえるのであれば、
ほとんどの事業者が発電事業を継続するものと推測されます。
なぜなら、撤去費用もさることながら、土地の維持管理費用や固定資産税も永久にかかり続けるからです。
そしてまだまだ使える太陽光発電設備をわざわざ廃棄するというのは、
国全体としてもデメリットしかありません。
太陽光発電は今後は主として地域の電源として活用し、
蓄電池による電力の安定化、災害時の電力の活用、電源の分散化、
など、新しい役割を与えていくことが必要です。
同時に国全体としても蓄電池の開発促進、エネルギーミックスの実現が期待できます。
そのためには、「蓄電池の普及によるコスト減と性能増」が必要だと考えます。
逆に蓄電池を太陽光発電に組み込まないのであれば、ほとんどの太陽光発電は設備の老朽化と共に撤去・廃棄され、
社会問題化していくだけのような気がしています。
なお、ほとんどの産業用太陽光発電のパワーコンディショナー(変電機器)は、
電気を外部に出力して使用するための「自立運転機能」が搭載されていませんので、
停電時は電気を垂れ流すだけで、使うことができません。
しかし、最低限蓄電池があれば、蓄電池側から電気を取り出して使うことができます。
このように、
太陽光発電事業には不確実なリスクもありますが、
長期的に見ても、FIT終了後に衰退する事業ではないと私は考えております。
今のところ7円~8円程度
固定価格買取制度(FIT)が終了した住宅用の太陽光発電は、FITが終了した後でも各電力会社により余剰電力を買い取ってもらえています。
仮に産業用の太陽光発電も事業継続可能な場合(恐らく条件付きで可能になるかと思いますが)、
基本的に低圧の発電所については大手電力会社に買い取ってもらうパターンが多くなると思われます。
現在のところおおよそ7円~8円の買取単価となっております。
私の所有する約80kwのシステムで計算すると、
年間86,364kwhの発電量(当初予測値)ですので、
現状24円で2,072,736円(税抜)のところ、
7円とすると、604,548(税抜)となります。
売電収入は激減しますが、返済がありませんので、
固定費・維持費を差し引いてもプラスにはなりそうです。
もちろんパワコンの交換も必要ですし、
パネルの劣化を考えると、発電量は少なくなるわけですが、
継続は可能な水準ではないかと思います。
ただし、それほど事業性のある単価でもありませんので、
維持が面倒だと感じた場合は撤去するなり、
安価で売却するなりすればよいのかなと思います。
まだ皮算用の段階
そうはいっても、まだ皮算用の段階ですので、
これらが本格的に議論されるのは、まだ10年以上後のことになりそうです。
ただ、低圧の中でも出力の小さい野立ての設備については撤去する方向で考えておいた方が良いと思います。