
含み益をBSに反映させるには
上記のような簡易的な貸借対照表(BS)をイメージしてみてください。
資本金300万円全額を自己資金にして借入をし、
時価1500万円の不動産を運よく1000万円で購入できた場合です。(諸費用その他は省略)
本当に現状で1500万円で売れる場合には、買った時点で500万円の「含み益」があるはずですね。
基本的に銀行評価は融資の場合は積算評価をすることが多いので、
建物であれば構造・築年数、土地であれば路線価・固定資産税評価額等を基準に評価額を出していきます。
しかし一旦融資を出して売買した後は、基本的には時価評価となることが多いです。
つまり1500万円の積算評価が出ていたとしても、BS上の評価としては簿価の1000万円と見られます。
どれほど割安に買っても、市況により不動産価格が上昇しても、
BS上の評価は簿価のままです。
借入金の返済が進んでいって元金が減り、
不動産を売却すれば手元に現金が残る(含み益がある状況)であろうBSであっても、
BS上の評価は簿価のままです。
この含み益をBS上に反映させようと思うと、
売却するしかありません。
基本的には銀行対策
BSの状況を見られるのは銀行だけですので、
含み益をBSに反映させることで評価が上がるのは、
主に銀行に対してです。
既存の不動産をステップにもっと大きな不動産を買いたいとか、
BSの状態が悪すぎて全然融資が受けられないとか、
そういった場合は「含み益の実現」は有力な手段ですが、
中長期的な保有を目指しているのに、
目先の含み益の実現を目指して不動産を売却する方が良いかどうかはケースバイケースでしょう。
含み益発現条件
1 売主事情・物件事情による安値で購入する
相場が1500万円だけど1000万円で買えた場合は、
本来的には時価が1000万円だから1000万円で買えたと考えることができるので、銀行は簿価で評価します。
しかし、中には競売や、訳アリや、売主の諸事情により、
売らざるを得ない場合等に、相場より安く買えることがあります。
2 不動産市況が上昇
特に何もしなくても、株価のように時代の変化により、
不動産価格が高騰した場合には、相場で買っていても、
全体的な不動産価格の高騰により、自動的に含み益が発生することがあります。
3 バリューアップさせる
例え相場で購入していたとしても、
問題がある不動産の場合だと、問題を解決することにより、
買った値段よりも高くなります。
土地の場合は、未造成地や近隣関係の問題を解決したり、
建物の場合は、内外装のリフォームや家賃の増額、入居率の上昇等により、
買った時よりも価値を上げる(バリューアップ)させることができます。
他にもあるかもしれませんし、
これら全てを組み合わせることもできます。
ただし、これらによるバリューアップをBSに反映させるには、
売却するしか方法はないのです。(普通の投資家は)
逆に含み損が発生することも
先述の含み益が発生する3つの条件が逆になった場合は、
自分の方に含み損が発生することになります。
含み損も売却するまでBSには反映されません。
いわゆる「売るに売れない」状況ですね。
含み損が発生するパターンとしては、
上記3パターンの他にも次のようなものがありそうです。
4 買い手が付かない
ド田舎物件や、賃貸需要の厳しい地域では、
かなり安くしても買い手が付かず、
これ以上安くするなら自分で所有しておいた方がマシということがあります。
事実上売却ができないわけで、
これは簿価を下回る含み損状態です。
5 解決できない周辺環境が発生
所有期間中に周辺環境が変化することが良くあります。
周囲に大きな建物が建って日が当たらなくなるとか、
近隣住民にヤバい感じになってしまった人に絡まれているとか、
買い手が見つかっても、買い手自身も解決できないような問題が発生すれば、
含み損として見えない負債を抱えてしまうことになります。
もちろん解決できそうだけど自分では解決できないというものも含まれますね。
このようにBS上では現れない資産や負債があります。
それらを考慮した上で、今後の不動産戦略を考えてみてはいかがでしょうか。